最近、話題の電子書籍。
その状況はグーグルトレンドを見れば一目瞭然。
そんなわけで電子書籍のセミナーを受講したので
メモの意味合いも込めて記す。
1.セミナー名
『電子書籍ビジネスの最新動向と印刷会社の進むべき道』
株式会社クリエイシオン代表取締役マルチメディア・プロデューサー
株式会社インプレスR&Dインターネットメディア総合研究所客員研究員
高木 利弘
2.セミナー内容
※(1)~(6)の見出しは整理のために独自につけた。
(1)講師の紹介
- 自己紹介
(2)現状
- 縮小する出版市場
- 経営悪化する出版社
- 激減する書店
- 拡大する電子書籍市場
- 主役はケータイ向け電子コミック
(3)電子書籍に対する各社の取り組み
- 出版社の取り組み
- 主な電子書籍販売サイト
- 主な電子書籍取次
(4)電子書籍端末について
- 日本では読書専用端末は失敗
- Kindleはなぜ成功したのか?
- iPodは成功するか?
- iPadとKindleの機能比較
- アップルの強み
- 世界的な電子書籍戦争が勃発!
(5)電子書籍について
- 書籍の電子化ってどういうこと?
- 書籍の電子化の多様性
- 出版社とパブリッシャーの違い
(6)今後のとりくみ
- これからどうなる?
- 印刷会社はどうすればいい?
3.セミナー内容の概要と感想
※独自の整理のために多少前後している部分もある。
(1)講師の紹介
- 講師は雑誌の元編集者で、活版印刷からDTP、マルチメディアからウェブサイト、そして電子書籍と一連の流れを経験している。「雑誌にCDを付録としてつけたのは私が最初」とのこと。
- ひとつの仕組みに偏ることなく、一連の流れを見た上でのセミナー内容(ということが言いたかったのだと思う)。
(2)現状
- 印刷・出版など既存の市場が縮小する中、ケータイ向け電子書籍市場は急成長(2008年度464億円/対前年比31%増)。PC向け電子書籍市場の成長は鈍化。
- 書籍は「携帯性・読みやすさ」が重要なポイント。
- 総合的な利便性は「ケータイ>紙書籍>PC」。
- ケータイ向け電子書籍市場が拡大したきっかけは、通信のブロードバンド化と定額制。
- 市場を牽引するコンテンツは主にコミック(漫画)。特に性的なもの(エロ)。
- 文芸系の電子書籍や電子写真集の成長は緩やか。
- ビデオやDVDの普及もエロから始まった。
- コミックはケータイで読めるけど、書籍や写真は読みたくない・読みにくい。
(3)電子書籍に対する各社の取り組み
- 出版・印刷・ITの各社が電子書籍の販売に取り組んでいるが、強いのはIT企業やベンチャー。
- この結果は、出版・印刷の各社が売り手の視点で、強い企業は買い手(読者)の視点でサービスを構築したことにとよる。例えば、出版・印刷の各社は紙の体裁にこだわったため、ケータイでは読みにくくなってしまった。
- また、(従来の書籍に対して)異業種の方が積極的でスピーディなのも要因。
(4)電子書籍端末について
- 日本では松下や東芝、ソニーが電子書籍端末を発売したが、いずれも撤退。
- 理由は大きく3つ。①読むまでの過程が長く面倒。②コンテンツが少ない。③コンテンツが残せない(レンタル)。
- 紙書籍を売りたいがために、売り手の視点で電子書籍販売の仕組みを考えてしまった。
- 一方、アメリカ・AmazonのKindleは成功しており、現時点での累計販売台数は150万台(推定)。
- 電子書籍の売上も好調に推移しており、Amazonにおける新刊書籍売上の35%が電子書籍。2009年のクリスマス商戦では逆転した。
- 成功の理由は大きく4つ。①すぐに読める。②コンテンツが多い。③コンテンツが安い。④コンテンツが残せる。
- 買い手(読者)の視点で電子書籍販売の仕組みを考えたから成功した。
- ちなみにAmazonは電子書籍販売において、Kindle本体、専門書、著作権切れ書籍、新聞購読で利益をあげており、一般的な書籍での利益は小さいとのこと。
- 新たな電子書籍端末として、まもなくAppleからiPadが発売される。
- Appleの強みは、iPhoneやiTunesなどの莫大なユーザー。
- AppleのユーザーならばスムーズにiPadの電子書籍に誘導することができる。
- 2010年は、Amazon、Apple、Sonyの各社から電子書籍の端末が出揃う。
- また、Amazonに加えてApple、Google(Sony)が電子書籍の販売を開始する。
- 販売者が著作者と直接契約を結ぶことができるため出版社はピンチ。しかも、印税額が大きい。
- 2010年から世界的に電子書籍が盛り上がる。
- 電子書籍のデータ形式はAppleとGoogle、Sonyが採用したePub(イーパブ)が世界標準になるといわれている。
(5)電子書籍について
- 電子書籍化のポイントは、本の体裁を活かしつつ、電子化ならではの機能を付加し、読者の目的の達成を最大化してあげること。
- 書籍の電子化にあたっては、電子書籍は一部に過ぎず、電子辞書、電子出版、ブロードバンドコンテンツ(動画)、電子雑誌、カーナビ、eラーニングなど多様にある。
- ただ電子化するのではなく、いずれも高付加価値が大事。例えば「地図→カーナビ」など。
- 日本では出版社とパブリッシャーが同義語になっているが、出版社の本来の意味は、版木を作って紙に印刷し、発行する会社こと。
- パブリッシャーの本来の意味は、情報を公(パブリック)にする存在(会社)ということ。
- 紙にこだわらず、パブリッシャーになろう。
(6)今後のとりくみ
- マスメディアを含め既存のメディア(例えばCD)は崩壊し、インターネットメディアの時代になる。
- 環境の変化に適応できない企業は生き残れない。
- 出版社の進む道は2つ。①出版を包括的に対応できることをメリットに著作者とマネジメント契約する。②経験を活かし、自らが著作者となる。
- 印刷会社の進む道は2つ。①縮小する紙の印刷業界に留まり、小さく生きる。②思い切ってパブリッシャーなど業態転換を試みる。
- 電子書籍の組版だけで儲けるのは難しい。一度作ったら終わりだし、単価の安いところが勝つ。
- 危機感をもって、新たなビジネスモデルを構築する必要がある。
感想
電子書籍端末は読みやすい
会場では電子書籍端末のサンプルとしてAmazonのKindleやSonyのReaderがあり、実際に読んだり操作したりすることができた。正直、「何だかんだいって電子書籍端末は読みにくいのでは?」と読みやすさに対して懐疑的な考えを持っていたが、良い意味で裏切られた。たいへん読みやすく、画面の文字を「印刷したもの」と勘違いしたほど。したがって、読みやすさの点では、電子書籍は紙書籍の代替として十分成り得ると考える。
電子書籍に注目
電子書籍の動向に注目する価値はあると感じた。確かに、電子書籍の市場規模は紙書籍に比べればまだ小さい。しかし、成長する見込みは大いにある。なぜならば、印刷を含めたあらゆる市場が縮小する中、電子書籍の市場は大きく成長しているからだ。さらに、今年のAppleやGoogleの電子書籍参入によって爆発的に普及するかもしれない。したがって、電子書籍の動向に注目する価値はあると考える。
ブログに書けるのはこんなところ。
電子書籍の理解にオススメということで下記の本も買った。
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