【電子書籍】モリサワのMCBook

最近、話題の電子書籍。

その状況はグーグルトレンドを見れば一目瞭然

そんなわけで電子書籍ソリューションのお話を聞いたので
メモの意味合いも込めて記す。

◯セミナー名

モリサワが提案する電子書籍ソリューション
~MCBookソリューション iPhone小説編~
講師:株式会社モリサワ

◯セミナー内容の概要

(1)電子書籍の歴史

  • 1998年 T-time(ボイジャー)~2010年 iPad(アップル)。
    • 日本の大手は軒並み撤退。しかし、2007年のiPhone、Kindleを皮切りに電子書籍が飛躍的に普及。「2010年は電子書籍元年」と呼称されるように、今、電子書籍は大きな注目を浴びている。

(2)電子書籍のフォーマット

メーカー 製品 拡張子 ビューワ デバイス(端末)
モリサワ MCBook .mcb MCBook Viewer iPhone、iPad、Android
amazon Kindle .azw Kindle、Kindle for iPhone Kindle、iPhone
IDPF ePub .epub Adobe Digital Editions等 iPad、PC、携帯電話
Adobe Acrobat .pdf Adobe Reader PC、携帯電話
ボイジャー T-Time .book T-Time PC、携帯電話
シャープ XMDF .zbf ブンコビューア PC、携帯電話
    • ePubが標準になるといわれているものの、現時点では電子書籍のフォーマットは各社各様で統一されていない。

(3)電子書籍の団体・協会など

  • 電書協(日本電子書籍出版社協会)
  • 雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアム
  • Jepa(日本電子出版協会)
    • 日本でも電子書籍の普及に備えた取り組みが始まった。

(4)市場規模

  • 2002年度10億円~2008年度464億円。
  • 2009年度は500億円を超えるといわれている。

(5)電子書籍を読むデバイス(端末)一例

  • スマートフォンとしてiPhone、Android、Windows Phone。
  • 読書端末としてKindle、Nook、Sony Reader、iPad。
    • 日本での注目デバイスはiPhone。他は発売されていなかったり、普及していなかったりするから。

(6)電子書籍ビジネスソリューション

  • モリサワは「MCBookソリューション iPhone小説編」と称し、印刷用に作成された小説などの文芸系DTPデータをiPhone用の電子書籍データに変換する“一連”のアプリケーションソフトを展開。
  • コンセプトは3つ、「簡単、見やすい、安い」。

(7)アプリケーションソフトの構成内容

  • MCBook Maker
    • DTPデータを二次利用可能なデータに変換する電子書籍コンテンツ変換ソフト。Windows用。
  • MCBook iPhone Builder
    • 変換されたそのデータをiPhone用アプリにするためのiPhoneアプリ生成ソフト。Mac用(?)。
    • 生成されたiPhoneアプリには、閲覧するためのビューア「MCBook Viewer」が組み込まれる。

(8)コンセプトひとつめ:簡単

印刷用のDTPデータから簡単にiPhoneアプリを作成可能
  • 専門的な知識は必要なく、印刷用のDTPデータから簡単な操作で電子書籍が作れる。
  • 作成手順:①DTPデータを「MCBook Maker」にドラッグ&ドロップ→②「MCBook Maker」上でフォントやルビなどの編集作業→③コンテンツデータに書き出し→④「MCBook iPhone Builder」でコンテンツデータをiPhoneアプリ化→⑤完成
  • 現時点での対応DTPデータは、InDesign CS3以降とMCB2 Ver.5以降。

(9)コンセプトふたつめ:見やすい

綺麗な日本語組版を実現
  • 文字を文字として表現する。
    • 文字がアウトラインされた絵ではないということ。
    • これによりデータ量が軽くなるし、検索などの機能を付加することもできる。
  • 組版エンジンを搭載。
    • 国産ソフトのため、縦組での禁則処理やルビ、縦中横などの日本語組版に対応している。
  • フォントが変更できる。
    • 美しいモリサワフォント(新ゴとかリュウミンとか)をコンテンツデータに埋め込むことができる。
    • ただし、1書体あたり3MB程度の容量を要する。
    • iPhoneアプリは20MBの容量制限があるので、書体の埋込すぎには注意が必要。
  • 文字サイズが変更できる。
  • ルビのON/OFFができる。横組も可能。

(10)コンセプトみっつめ:安い

年間利用料5万円+iPhoneアプリ売上従量課金5%
  • 初期導入費用が安く、制作費の心配が少ない。
    • あくまでも予定だが年間利用料は4~5万円ぐらい。iPhoneアプリ売上従量課金は売価の5%ぐらい。
    • iPhoneアプリ売上従量課金は、アップルからの売上明細をモリサワに提示した上で支払う。
  • アップルとの販売契約や販売に関わる作業は、モリサワでは行わない。

(11)MCBookのリリース

  • 5月末~6月前半の予定。

◯セミナー内容の補足

(1)MCBookがiPhone向けに特化している理由

  • 日本においては、電子書籍を読むための“適切”なデバイスがiPhone以外に“ない”から。
  • ただし、これからiPadやAndroidケータイなどが出揃うので、状況を見て対応デバイスを増やしていく予定。まずはiPhone、つづいてiPad、その他のデバイスは1年後ぐらいになる。
    • 対応デバイスが増えた際のバージョンアップは無料とのこと。

(2)InDesignではなくMCBookで電子書籍データを制作する理由

  • InDesginからePubに書き出しはできるが、日本語組版に対する機能が不足している。また、書き出し後のデータも不完全で、例えば、見出しの装飾やルビの情報が消えてしまう。
    • ePubに見出しの装飾やルビの機能がないわけではない。
  • MCBookは、日本語組版に対応するだけでなく、装飾やルビなどの情報を漏らすこと無くコンテンツデータに反映することができる。

(3)MCBookのデータ形式が業界標準といわれるePubではなくモリサワ独自の理由

  • ePubの仕様がまだ定まっていないから。
  • ePubと決別したわけではないので、将来的にePubの仕様が整えば対応する予定。

(4)MCBookを利用した場合の電子書籍販売に関わる一連のコスト

固定費:5~60,800円/年
  • iPhone Developer Program Standard:10,800円/年
    • iPhoneアプリを販売するにあたって、上記のようなアップルとの契約が必要。
  • MCBook利用料:4~50,000円/年(予定)
変動費:売価の35%
  • アップルへのiPhoneアプリ売上従量課金:iPhoneアプリ売価の30%
  • モリサワへのiPhoneアプリ売上従量課金:iPhoneアプリ売価の5%(予定)
    • AppStoreで1000円の本が1000冊売れたら、売上100万円のうち、35万円がアップルとモリサワ、65万円が販売元の取り分となる。この65万円から当社の取り分を捻出することになる?

◯感想・考察

個人的に感じたMCBookのメリット

ビューアが電子書籍データに含まれているので手軽に読んでもらえる
  • 電子書籍の業界標準データ形式は「ePub」になるといわれているが、これだけではただのデータなので読むためのビューアが必要。しかし、ビューアの仕様は各社各様で統一されておらず、表現や機能、使い勝手はバラバラ。よって、仮にePubで電子書籍を作ったとしても、読者がビューアを持っていなければ読んでもらえないし、ビューアを持っていたとしても利用しているものによって表現が変わってしまう。その点、MCBookは電子書籍データにビューア機能が含まれているので、読者がビューアを用意することなく読めるし、表現も統一できる。
    • iPhoneにはビューアの機能が備わっていないため、別途用意する必要がある。
    • 種類は、電子書籍販売サイトが制作したもの、個人が制作したもの、無料、有料と様々。
    • iPadにはiBooksというePub用のビューアが用意される予定。

個人的に感じたMCBookのデメリット

コストが発生してしまう
  • 言わずもがな、MCBookで制作した電子書籍データを販売すると、売上に応じたコスト(売価の5%)が発生してしまう。
    • 手軽に読んでもらうためにMCBookにして価格を上げるか、価格を抑えるためにePubにして読者にビューアを用意してもらうか…。
ベンダーに依存してしまう
  • MCBookで生成される電子書籍データは、モリサワ独自形式のため汎用性がない。
  • もし、モリサワが倒産や不採算などでMCBookの開発を中止したら、データは無駄になってしまう。
    • ePubならばオープンな仕様のため、ビューアさえ入っていれば、iPhoneだろうとAndroidだろうと読めるし、他の形式に変換もしやすい。
データ容量が大きくなりがち
  • iPhoneなどの携帯端末は通信速度が早くないし、iPhoneアプリは20MBの容量制限があるので、容量は小さい方が望ましい。しかし、MCBookはフォントやビューアを電子書籍データに埋め込むため、容量が大きくなりがち。
    • 1書体あたり3MB程度の容量を要する。
    • ビューアの容量はそれほど大きくないとのこと。
ビューアは読者に好まれるか?
  • ビューアがいろいろあることは上記した通り。読者が好みのビューアで、好みの読み方をするという利用方法が定着した場合、強制的にMCBookのビューアを使用させることになってしまう。
    • 電子書籍データにビューアが含まれていることは、デメリットにもなりうるかも…。
    • とはいえ、モリサワはePubと決別したわけではないので、将来的には生成されるデータがePubになるかも。

個人的に印象に残ったこと

  • ePubの日本語仕様がまだ定まっていないこと。
  • ePubを表示するビューアの仕様も統一されていないこと。
    • なんだがクロスブラウザ問題と同じことが起きそうな予感…。
    • ブラウザがインターネットの世界に大きな影響を与えているように、ビューアが電子書籍に大きな影響を与えそうな予感。

ってところか。

ところでリリースは5月末6月初旬ということだが
モリサワサイトでの反応はないなあ・・・。

モリサワ-文庫ビューア(Lite版)「銀河鉄道の夜」

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA